2020.9.15 心理学講座「話し手と聞き手の心理学」1

1「うまく話せない?」

「私、うまく話せなくて」

皆さんもよく耳にする言葉ではないでしょうか。

コミュニケーションは話し手と聞き手の関係性で成り立っています。

話し手が伝えたいことを表現し、聞き手は話し手の伝えようとしていることを理解する。

コミュニケーションはこの関係から始まっていきます。

では、なぜ話し手は「うまく話せない」と思ってしまうのでしょう。

いくつかの理由として、恥ずかしいとか、言葉にならないとか、緊張してしまうとか、謙遜しているとか、何をどういえばいいのかわからないとか、そこには様々な理由があります。

その中でも私が感じる一番多い理由は、「自分の伝えたいことが伝えきれない」ことにあるのではないかと思われます。

例えば、伝えたいことが10個あったとして、そのうち一つしか伝えられなければ、話し手は「うまく伝えられなかった」と思うでしょう。

では、伝えたいことが10個あって、10個全部伝えることができたら、うまく話せたと思うでしょうか?

たぶん思える人のほうが多いでしょうね。

では、伝えたいことが10個あって、10個全部伝えることができたとして、聞き手は10個全部理解してくれるでしょうか?

必ずしもそうではない、と私は感じています。

個人差はありますが、10個のうち1個を伝えて10個を理解できる人もいるでしょうし、10個全部伝えても、一つも理解できない人もいるかもしれません。

でも、自分の伝えたいことが伝わらなかったとき、多くの人は「うまく話せなかった」と自己分析をしてしまうのかもしれません。

ここで、皆さんに質問です。

「うまく話せない」の「うまく」というのは、どのような意味があるのでしょう。

自分が思いをきちんと伝えられたことを「うまく」というのか、相手にきちんと伝わったことを「うまく」というのか、それ以外に理由があるのか。

私は、話し手のコツとして、うまく伝えることではなく、正しく理解してもらうことが大切だと感じています。

話し手が「うまく話せた」と思っても、聞き手が勘違いをしてしまったりすると、これは伝わっていることにはなりませんからね。

大切なことは「うまく話す」ことではなくて、「伝えたいことを正確に理解してもらう」ことにあるのではないかと思います。

「うまく話せない」そう思っている人の多くは、伝えたいことがたくさんあって、その伝えたいことに対して表現する言葉が浮かばなかったり、どう表現していいかわからなかったり、気持ちを言葉に変換する時間がかかったりしていることが多いのではないかと私は感じます。

結果、自分に腹を立てたり、聞き手に怒りをぶつけたり、話すこと自体をやめてしまったりとなってしまうのかもしれませんね。

話し手にとって大切なこととして、伝えたい10個のことを10個伝えるのではなく、まず一つ伝える努力をしてみること、と私は感じています。

話し手が10個全部伝えてとしても、聞き手が1個しか受け取れる余裕がなければ、9個は受け取れなくなるわけですから、相手が受け取れる量だけ伝えることができれば、結果として「うまく」伝えられたということになるのではないでしょうか?

それに、どれだけ努力して伝えても聞き手に受け入れられない時だってもちろんあるわけです。

この場合、それでも伝え続けることができれば、相手が受け取ってくれなくても「伝える技術」は向上します。

つまり、無駄にはならないわけです。

最初にも言いましたが、コミュニケーションは話し手と聞き手両方がいて初めて成り立つものです。

うまく話せたがどうか、それは話し手が判断することではないのかもしれません。

聞き手側にも問題がないわけではないですからね。

コミュニケーションがうまくいかないのは、お互いに問題がある、と思ったほうがいいかもしれません。

どちらかがその問題に気が付いて、修正をかければ、コミュニケーションは改善されるかもしれませんね。

話し手にとって大切なのは、「ベストを尽くせたかどうか」ではないかと思うわけです。

うまく伝えられるときもあれば、できない時もある。

だからこそ、今自分ができるベストを尽くす。

これでいいのではないかな、と感じます。

うまく話せない。

いいではないですか。

そう思えた人は、うまく話せる自分に成長できることを意味しているかもしれませんよ。

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