2020.6.18 心理学講座 リーダーシップの孤独(リーダーシップへの道12)
友人5人と登山していると想像してみてください。
あなたは先頭です。
他の4人は、みんなあなたの後をついてきます。
さて、先頭のあなたが道を間違えたら、どうなりますか?
全員山頂には着かないし、最悪の場合遭難してしまうかもしれませんよね。
リーダーシップをとっているときは、自分の前に人はいません。
この道が正しいのかどうか、教えてくれる人は誰もいないわけです。
同時に、みんなが自分の事を信じて、ついてきてくれます。
これって、すごいプレッシャーですよね。
リーダーシップの道を進んでいるとき、実はこのプレッシャーと常に向かい合います。
すごく孤独なんですよ。
誰かに誘導してもらえたら、楽ですよね。
もし道を間違えても、自分の責任にはならないですよね。
リーダーシップの道は、自然とこのプレッシャーを感じていて、このプレッシャーから逃げたくなります。
しかし、逃げるに逃げられない事もたくさんあります。
例えば、結婚を考えている。
結婚するにはパートナーが必要で、結婚すればそのうちに子供ができる。
家族を守り、子供を育てると言う責任ができる。
その責任を背負う事を考えたとき「自分には背負えない」と思ったら。
結婚したいと思いますか?
結婚直前で関係が破綻したり、子供ができたとたん関係が悪化したりするパートナーは、実はリーダーシップ=親としての責任ととらえている人が多く、この責任から逃げたくなるわけです。
そして、逃げる勇気がないから、相手から見捨てられるように振る舞ったり、見限られるように、相手に嫌われるような行動とったりします。
実際のカウンセリングで、ラブラブなカップルだったのに、お互いが結婚の話を始めたとたん、彼から連絡が来なくなって、1ヶ月後に別れようとメールが来た。
クライアントさんは自分が何か悪い事をしたのではないかと不安になり、そして別れたくないからカウンセリングを利用したわけですが、話を聴いていると、クライアントさんに問題はなかったわけです。
結果このカップルは別れる事になったのですが、本当の原因は、彼と父親の間には確執があったらしく、それが原因の主要因であると推測できたわけです。
想像してみてください。
子供時代、父親に対して「もっと父親らしくしろ」「父親はこうあるべき」「父親は完璧ではない」と、父親に対して怒りを持ったとします(母親でも同じです)。
さて、自分が父親(女性なら母親)になったとき、当然子供からそういわれない自信はあるでしょうか?
親に対して完璧さを求めた分だけ、自分が親になるときに「完璧な親でなければいけない」と思いがちになります。
で、自分が完璧な親になれない、と思ったら、親になりたいと思いますでしょうか?
そして、親にならない簡単な方法は何でしょうか?
答えは、自分が完璧でないと感じた分だけ、親にはなりたくないわけですから、親にならない方法は結婚しない事、になるわけです。
ちまたでよくある「子供ができたら逃げる男」は大概このパターンだと思っていいです。
女性も同じで、完璧な母親になれないと思ったら、男性と同じパターンを繰り返したり、結婚しそうにない男性ばかりを選んだりします。
もう一つの要因として「大人になりたくない」というのがあります。
家の中で一番権威がある、と子供が思うのは、たいがいがお父さんです。
もちろんお母さんが一番権威があるという家もありますけどね。
この「家庭で一番権威がある人」から、かわいがられて愛された経験がある人は、一つ間違えれば「大人になると愛されなくなるのでは」という不安を持ちます。
この場合、子供から見た両親の関係がよくないと子供が感じ、かつ自分と異性の親との関係があまりにも良好な場合、「大人になりたくない」という感情が芽生えてきます。
結婚するとか、子供を持つというのは、大人だからできる事ですから、大人になりたくない人は結婚したり子供を持たないように、無意識に選択するわけです。
これは「権威との葛藤」にも共通する事ですが、子供の自分で居続ける限り、リーダーシップの道は進まなくてよくなります。
これも「抵抗」の一種なんですよね。
余談ですが、集団で登山をするとき、一番実力のある人が先頭を歩き、その次に実力のある人が最後尾を歩きます。
これは、登山に不慣れな人を最後尾の人が支えているわけです。
先頭がリーダーシップを求められるのは当然かもしれませんが、実はしんがりも、とても重要な役割を担う、先頭を歩く人とは違うリーダーシップを持つ必要があるわけです。
このお話は、「リーダーシップの分類」や「リーダーシップの誤解」で、お話しておりますので、そちらをご覧くださいませ。