2020.9.22 心理学講座 「コミュニケーションがうまくいかなくなったときのチェックポイント」4
第1章 5つのチェックポイント
その4「話し手、聞き手の勘違いという問題」
カウンセリングの中でよく出てくる言葉にこのようなものがあります。
「きっと私はみんなから嫌われているんだ。」
さて、ここで皆さんに質問です。
客観的に見て、この言葉は正しいでしょうか?
正解は、イエスでもノーでもなく、わからないが正解です。
もしかしたらおっしゃるとおり嫌われているかもしれないし、そうではないかもしれない。
しかし、この一文からではそれはわからないんですよね。
言った本人のリアルな感情としては「嫌われている」が真実として扱われます。
しかし、本当に嫌われているかどうかは、周りにいる人たちに本音を聞いてみないとわからないんですよね。
たとえば、仲のいい友人がある日、自分に対してぶっきらぼうな態度をとったとします。
そしたら自分は「友人に対して何か悪いことでもしたんだろうか」とか「もしかしたら嫌われたのかしら」とか思うかもしれません。
でも、もしかしたらその日に限って友人の機嫌が単に悪かっただけかもしれないし、まったく別の何かで怒っていただけなのかもしれません。
こう考えたら、必ずしも自分に非があるとは特定できないんですよね。
ここで多くの方は「勘違い」をするわけです。
「きっと私が原因なんだ」とか「私が嫌われたからだ」とか思ってしまうわけです。
実は一番問題になるのは勘違いすることではなく、勘違いしたことを「きっとそうに違いない」と勝手に断定してしまうことです。
これこそまさに「勘違い」なんです。
勘違いが生じると、当然ですがコミュニケーションがうまくいくわけがありません。
相手が考えていることと自分が考えていることが一致していませんからね。
勘違いをなくす手っ取り早い方法は「自分を疑ってみる」ということです。
ただし、ネガティブな感情だけ疑います。
例えば、大きな鞄をもって満員電車に乗っていて、横にいる人に「ちっ」と舌打ちをされ、嫌な顔をされたとします。
多くの人は「申し訳ないな」と思うわけです。
そう思う事で、周りの人に対する配慮が生まれます。
ただ、これが行き過ぎてしまう人がいるわけです。
「大きな鞄をもっている私が悪い」とか「私が大きな鞄をもってさえいなければ」丘とか思ってしまうと、最終的に「みんな私が悪い」に到達してしまうわけです。
たしかに、他人に迷惑をかける行為は慎む必要はあるかもしれません。
しかし、必要以上に迷惑をかけてはいけないと思うと、それこそコミュニケーションは阻害されて、ますます手がティブな方向へと考えが濃縮されてしまう増す。
「私が悪い」と思ったとき、こう疑ってください。
「本当にすべて私が悪いのか?」と
大きな鞄をもって満員電車に乗ること自体は、誰も悪くありませんからね。
ただ偶然のその場に居合わせた人に不快を与えたというだけで、それ以上でもそれ以下でもないわけです。
そこに気がつく事が大切です。
余談ですが「誰かが悪い」という人はこのお話の全く逆だと思ってください。
自分自身に原因がありますから。
「誰かが悪い」という心理は、「自分は悪くない」という所からきています。
だからといって誰かに「お前が悪い」といわれたわけではなく、自分が自分に「お前が悪いんじゃないの?」と思い、それを否定する言葉が「俺は悪くないよ」となるわけです。
人の性にする人は、自分と向き合えない人ですから、しっかりと自分と向き合う事をお勧めします。
ネガティブな感情そのものをなくすことはできません。
大事なのは、ネガティブな感情を鵜呑みにするのではなく、「そのネガティブは本当なのか?」と自分に疑問を持ってみることです。
ノートに書いて客観的に整理するというのもいいやり方かもしれませんし、友人などに聞いてみるのもいいでしょう。
「客観的な目線・意見」がポイントになります。
難しく考えずに、気分転換するみたいにやってみてください。
その5「コミュニケーションをとる目的意識」
例えば、みなさんが東京に住んでいて、これから大阪に移動しようとしています。
そのとき、一緒にいく友人やパートナーが
「新幹線じゃなきゃやだ」
と言ってだだをこね始めました。
通常であれば、東京から大阪に新幹線でいくのはそれほど大変な事ではありませんね。
でももし、新幹線が天候などの影響で止まってしまったら、この人たちはどうするのでしょう?
「新幹線じゃなきゃやだ」ですから、新幹線が動かないのであれば大阪に行かないというでしょうか。
それとも、他の交通機関、例えば飛行機だったり、車だったり、バスだったり船などを使って大阪に向かうでしょうか?
普通に考えれば誰だって「大阪に行く」事が目的だと気がつきますから、新幹線でいく事にこだわる人は少ないですね。
ところが、コミュニケーションをとろうとしているとき、この「目的」がおかしくなっているケースがよくあるんですよね。
実は「けんか」がこれに当てはまります。
けんかは、相手に伝えたくても伝わらないとき、なんでわかってくれないという気持ちが強くなり、そこに怒りが加わって相手に感情をぶつけてしまいます。
された側は、怒りをぶつけてきていると感じてしまいますので(本当はわかってほしいだけ)、怒りの圧力に対抗するため怒りで対応します。
これで、けんかが成立してしまうわけですね。
もちろん、けんかのすべてがこのような仕組みではありません。
けんかのしくみが詳しく知りたい方は、私の著書「怒りとけんかのコミュニケーション」をお読みください。
話を戻すと、けんかの目的は「自分の伝えたい事をわかってほしい」だけなんです。
でも、それがうまく伝わらなくなってくると、「なんでわからない」「なんで理解してくれない」と、怒りの感情が目的をずらしていくわけです。
結果として、気がついたら「あなたが悪い」「私は悪くない」など「正しさの証明」が目的になってしまうわけです。
自分が相手に伝えたい事は何か。
怒りの感情に振り回されずに、目的を見失わないでくださいね。