2020.10.2 心理学講座 感謝と赦しと手放し

カウンセリングをしておりますと、よくクライアントさんがこうおっしゃいます。

「感謝できない」

「赦せない」

「執着してしまう」

ま、人間ですから、誰にだってこんなことはあります。

ただ、皆さんは「できない理由」を考えたことがありますか?

今回はそのあたりを覗いていこうと思います。

1 感謝

Goo辞書によると、「ありがたいと思う気持ちを表すこと。また、その気持ち。「―の心」「深く―する」」とあります。

誰かに対して、何かに対して、「ありがたい」と感じたとき、人は感謝するわけですよね。

感謝=ありがとう

といってもいいかもしれません。

では、感謝できないというのは、「ありがたいと思えない」ということになるのでしょうか?

たぶん違うと思います。

感謝できないのは「感謝したいのだけれども、感謝を伝えられない何かがある」と私は感じるわけです。

例えば、怒っているときに感謝はできません。

どれだけ感謝したい気持ちが現れても、怒りがあると素直になれませんからね。

また「当たり前」と思っていても、感謝はできなくなります。

人は「当たり前」と思っていることに価値を感じません。

例えば、毎日水道の蛇口をひねれば水が出ます。

当たり前ですよね。

例えば水道料金が払えなくなったりすると、これはあたりまえでなくなってしまいます。

私の体験で、阪神・淡路大震災の時、約1か月間、水道の蛇口から水が出ませんでした。

その間、毎日ポリタンクを担いで山にのぼり、2時間かけて山の湧き水をひしゃくで汲み、持ち帰って生活用水に使っていました。

水道の蛇口から水が出たとき、涙が出たのを覚えています。

水道管を治してくれた人たちに、心から感謝した瞬間ですね。

このように、「感謝」は自分の中にある「当たり前」と思っていることや、怒りなどの「感情」によって強く影響されるわけです。

感謝を伝えられると、人は誰でも幸せな気分になります。

もちろん、感謝したいと思うことをされたときも、幸せな気分になりますよね。

つまり、幸せな気分を感じられないひとは、感謝をあまり感じていないかもしれないんですよね。

感謝がないわけではないんですよ。

感謝を感じられる心の余裕がないんですよね。

でも、周りから見れば「感謝がない」とみられてしまい、損をしてしまったりするんですよね。

このように、「感謝」というのは、他の感情や心の状態に非常に影響を受けやすく、簡単に伝えられる分だけ、心に埋もれやすいといえるかもしれません。

2 赦し

ゆるしには、二つの言葉があります。

一つは「許し」。

もう一つは「赦し」です。

「許し」は、簡単にいうと「許可を出すこと」となります。

「赦し」は、「相手を受け入れること」なんだそうです。

これはキリスト教に基づいた考え方だそうです。

辞書では、この二つは同じ意味で扱われているようです。

辞書によっても解釈や表現は違いますね。

「赦せない」

これは「相手を受け入れられない」ということになりますね。

これも感情としては「怒り」になります。

怒っているときに相手を赦そうという気には、誰だってなりませんからね。

では、怒り以外であるかな、と探したら、ちゃんとあるんですよ。

「赦されない」と思った時です。

相手から赦されないと思ったとき、人は「恐怖」を感じます。

すると、自分が赦さない時は、これくらい相手に攻撃する、という基準があるから、相手が赦してくれない分だけ、自分を守らなければいけない、と無意識は考えます。

これが「自己防衛」といいます。

自己防衛は、一種の籠城と同じですから、まあ周りから何をしたって出てきてもくれないし、赦すことも赦されることもできなくなってしまうわけです。

でも、根本的に間違いがあるんですよね。

相手が自分を赦してくれるかどうか、ではなくて、「自分が相手から許されないと」思い込んだ結果ですからね。

相手はびっくりしてしまうわけです。

例えば、夫が浮気をしたとします。

妻にばれて謝罪をして、さあやり直そうとなった時に、夫が妻に対して暴言を吐いたり、攻撃的になるのは、この「自己防衛」が働いていたりするかもしれないわけです。

この段階では、妻は夫が謝罪をしているから赦しているのですが、夫は自分のしたことが「赦されない」となってしまうわけです。

理由は、妻が浮気したら赦さないから。

よくありそうな話ですよね。

もちろんこの逆もあります。

同じシチュエーションでさあやりなおそうとなった時に、妻が攻撃的になる場合もあります。

これは「赦せない」ですよね。

ポイントは「赦さない」ではないんですよね。

些細なニュアンスの違いですけど。

妻からすれば、赦したいけど「赦せない」何か心のわだかまりが残っているわけです。

そこを見つけないと、なかなか「赦す」ことも「赦される」ことも難しくなります。

3 手放し

手放し、ということは、今現在何かにしがみついている、ということですよね。

カウンセリングではよく「執着を手放す」といいますが、手放すものはそれ以外にあります。

元彼や元カノへの想いであったり、親に対する感情であったり、過去の出来事であったり、経験であったり。

イメージすると、両手にぼろぼろになった毛布をがしっとしがみついていて、全く他のものが持てない状態になっている感じです。

ただ、ここで気が付いてほしいんです。

手放すものの対象って、実はすべて「過去」なんですよね。

正確には「過去の思い出や経験など」なんです。

例えば、彼に執着している女性がいるとします。

彼に振られて傷心の状態なわけですが、どうしても彼のことが忘れられず、毎日泣きくらいしているわけです。

この状態は、「彼」に執着しているように見えますが、正確には「彼と過ごした楽しい時間」に執着していて、その「彼と過ごした楽しい時間」がもう未来にないことを嘆いている、となるわけです。

別の例でいうと、子供時代に親に八つ当たりされたとします。

子どもですから、自分が親に怒られたことに納得できず、ずっと親に対して怒りを持ち続けます。

そのまま大人になり、今でも親のことが好きになれない。

これは「理不尽に殴られた」ことに執着していることになるわけですね。

執着することには、そうしなければいけない理由があります。

失恋の痛みに耐えられないから。

怒りの矛先がないと自分を責めてしまうから。

他にもいろんな理由があるでしょう。

中には「幸せになっては困るから」とか「愛されてはいけないから」「成功してはいけないから」という理由もあったりします。

執着は心が壊れてしまうのを防ぐ役割があると同時に、そこから抜け出しにくくなる、つまり変化を遠ざけてしまう欠点があるわけです。

手放しは、ここで必要になってくるんですよ。

過去の恋人にしがみついている人が、新しい恋人を見つけるのは容易ではありません。

なにせ両手がふさがっていますからね。

両手を開けてからでないと、新しいものは手に入れられないんですよ。

古い毛布を両手から離さないと、新しい毛布を受け取ることができないわけです。

じゃあどうすればいいの?

これはみんなが必ずと言っていいほどおっしゃる質問です。

言葉でいうのは簡単なんですよ。

こうすればいい、ああすればいい。

それができれば苦労はしないわけです。

まず、していただきたいことは「手放せない」「手放したくない」ことを自覚することです。

先ほどもお話ししたように、もともと心を守るために執着があります。

一種の麻酔のようなものですから、それがなくなると間違いなく心が痛いと悲鳴を上げるからです。

痛みは、痛みがあることを自覚をしないとなくなりません。

けがをした時、体の傷は「痛い」というメッセージを出すことで、ここに傷があることを教えます。

すると、傷を認識した体は直そうと「自己治癒能力」を発揮します。

けれど、けがをしても「痛い」と感じなかったとき、傷は治りにくいんですよね。

まずは「認めること」。

そのうえで、心の傷をいやし、そこまでできたら、初めて手放しができる準備が整うわけです。

もっと簡単に手放しをする方法はありますが、それはこの後紹介します。

4 3つの関係性

さて、ここまで「感謝」「赦し」「手放し」のお話をしてきましたが、この3つにはある関係性があります。

それは、「お互いなくして成立しない」という関係です。

「感謝」するためには、相手をお受け入れる必要がありますし、怒りや執着を手放す必要があります。

「赦し」の為には、相手に対する感謝と、自分の執着の手放しが必要です。

「手放し」のためには、自分を愛してくれている人たちへの感謝と、しがみついていた自分を「赦す」ことが必要なんですよね。

感謝=赦し×手放し

赦し=感謝×手放し

手放し=感謝×赦し

こんな感じになるわけです。

これを理解しておくと、誰かに感謝できない時は、赦しと手放し、どちらかか両方ができていない可能性がありますし、赦せない時、赦されないと思っているときは、感謝と手放しのどちらかか両方ができていない可能性があるわけです。

手放しができない時は、感謝と赦しのどちらかか両方ができていないと思えば、問題を見つけやすくなりますよね。

3つとも「できない」ことが問題ではないんですよ。

それは現状での「事実」ですからね。

「なぜできないか」に問題が隠れています。

隠れた問題に気が付くことができれば、この3つは必ず手に入ります。

難しいと感じたら、人の手を借りてください。

きっとあなたを導いてくれるでしょう。

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