先入観
昔、テレビ番組で、大学の先生が「2週間で絵が上達する方法」というのを教えていたんですよ。
まあ好奇心が旺盛な私ですから、この手の話はかぶりつきで見てたんです。
大学の先生の言う事では、絵が上達するポイントは二つで、一つは元の模写する対象物を逆さまにする事でした。
例えるならば、天橋立を股の間から覗き込むみたいな感じでしょうか?
もう一つは、模写する絵などをタイル状に区切って、その升目ごとに観察すると上手にかけるようになるそうです。
この大学の先生がいっていた事なのですが、絵が上手にかけない理由は「先入観があることだ」とおっしゃっていました。
対象物をきちんと観察していないから、目はきっとこうだろう、鼻はこんな感じだろうなどと、自分で思い込んでいるものを書いているのであって、実際にはあまり見ていないという感じの内容でした。
確かに模写する元の絵を逆さまにすると、それだけでいつも見慣れているものが全く違和感となって視界に飛び込んできますので、それだけ絵に集中し、観察する事になります。
この話を聞いて、私は対人関係も似たようなものかもしれないなぁ、と感じました。
人は最初から先入観を持った状態で、相手を見ます。
それは例えるならば、先入観という色眼鏡をかけて相手を見ているようなもので、相手が正しく見えているかどうかはこの時点ではわからないんですよね。
眼鏡を外せば、正しいものが視界に飛び込んでくるわけですが、緑色の色眼鏡をしていると、緑色は見えなくなりますからね。
この状態では正しく見えているとはいえないわけです。
私はこの「心の色眼鏡」が先入観だと感じています。
まあ、絵を描く事と対人関係の違うところは、描かれる対象である風景や人物は、書いている人を先入観で見たりはしませんが、人と人とのコミュニケーションにおいては、お互いがお互いを先入観で見合いっこしているという違いはあるかもしれませんね。
その分だけ誤解が生じやすく、勘違いがおきやすく、思いが伝わりにくくなるのかもしれませんね。
絵を描くときに対象物を逆さまに見るように、対人関係の先入観を取り払うために、逆さまにでもなればいいのかもしれませんが、人と会うのに絶えず逆立ちするわけにはいきませんから、せめて心だけでも逆さまにしてみるのはどうだろう、とちょっと思ったんですよね。
では、「心を逆さまにする」というのはどういう事でしょう?
私なりの考えですが、それは「決めつけない」事ではないかと感じます。
「~にちがいない」「~にきまている「~だ!」と、先に結論を出すのではなくて、「どうなんだろう」という疑問を持つ事が、心を逆さまにする一つの方法かもしれませんね。
カウンセリングで私がクライアントさんによくお話をするのが、「あたりまえのことをあたりまえにみない」という話をよくします。
これも心を逆さまにする一つの方法なのかもしれません。
コミュニケーションがうまくとれていないと感じているときは、自分に、そして相手に先入観を持ったままで判断して答えを決めつけたりしていないかどうか。
よ~くチェックしてみてはいかがでしょう?
※この講座は、メルマガ「毎日読める「恋と仕事の心理学」 2013/7/2号」に掲載されたものを、加筆修正したものです。